『シゴフミ』
一人の中の複数の人格、というよりは理想の自分と実際の自分とでも読み替える方がぴったりか。その二人の対比とそれまでの死を通しての死者とシゴフミの受取人である生者との関りを見せることが目的だったと思うが、最後の二人の対比に至って引き金を引くという行為に重さがさほど感じられず、あまり響いてこなかったなと。色々なタイプの死を並べるためにステレオタイプを並べたことで少し薄まったなという印象もある。まあ、死を扱うことは正解らしい正解もなく難しいし、人それぞれが思う死とそれに繋がるキャラクターの属性が気に入るかどうかというだけな気もするが。
何だかんだで誰かが死んでも、生きている者はその者にとっての世界との繋がりがあって続いているというエピローグは、無情な優しさとでもいうべきか、結構気に入った。
『レンタルマギカ』
魔術の考証や世界観のための設定も大事だけど、共同体的なものがある作品の最後はキャラクター同士の関係性に帰結するなと。生まれたてのドラゴンに付けた名前の持つ意味が光る〆方も良かった。
中盤の話は重要な話ではあったが、重い話をこの作品特有の設定を動機として順を踏んで見せたために、テンポがかなり遅くなって見るのが億劫だった。それが終わって、それぞれのキャラクターを掘り下げ始めてからはサクサク進み、見易くてやり取りが生き生きしていた。闘いの場面が終始暗い色調だったのに対し、話の内容は優しさに溢れていて、そういうバランスの取り方が良かったです。お疲れ様でした。
『キミキス pure rouge』
二見さんとの気持ちの深め方や再度電撃的な出会いをすることは良かった。映研の方もぽっと出の割りには爽やかで良い感じに見えた。それなのに、サックスの存在意義とか星乃さんの切られ方とか本筋の方がもうどうにもならない。あげく、迷惑な二人が歩道で涙ながらにキスしてその瞬間花火が上がってEDに入るとかもう……。
その流れにかなり頭に来てたけど、花火が弾けると同時に怒りも弾けてしまって「あーあ、やっちゃたな」と思った。主人公を三分割したにしては視点が分割されていなかったので、かなり見苦しかったと思うし、初めから摩央姉ちゃんに向かっていけば良かったように思う。
やっぱりこういうジャンルの作品は、主人公もそうだけど、他のキャラ、特にヒロインが幸せでないとね。
『CLANNAD』
親から子へと家族の中で受け継がれるもの、そんな普遍的なテーマながらも、時間を掛けて丁寧に積み重ねて見せられると、流石に王道だなと。途中のルートでメインキャラ以外がきちんと描かれていたことが、そのメインキャラを学友に納まるように上手く出来た要因だろうなと。それが最終ルートに対しても引き立てる形になっていて上手い。
まあ、第1話を見たらどのキャラクターがメインヒロインかは一目瞭然なので、どうしても嫌なら見なければよいが、見ておいて損はない所か得をしたなと思える作品だった。本編終了後に番外編の予告があったが、これが実にファンサービスに富んでいたので、最後まで見た人は忘れずに見ておきたいところ。ひとまずお疲れ様でした。
『アイシールド21』
パワー対スピードが度々強調されてきて、スピードを得たパワー対純粋なスピードの最終系で締めくくった辺りは実に上手い。
原作は続いているが、ぽっと出のチームとの決勝を前に一番綺麗な所で切ったと思う。実際、大田原がこんな所でなくクリスマスボウルの決勝で闘いたかった旨を語ったことからも、この試合の意味の大きさが伺えた。
ここまで続けてきて、原作も続いていて追いつく形で打ち切ることになったので、ファンへのサービスに最後の最後でNFLでプレイしている姿を描いたのだろうとは思う。しかしながら、そこへ繋がっていくように感じない作風だったので蛇足に感じた。やるなら夢落ちが限界だったかなと。
重量感やスピードを正面切って描くとなると枚数や1枚絵の完成度を要求されるので、上手く見せ切れていないこともあったが光る回もあった。お疲れ様でした。
『破天荒遊戯』
結局、三人の旅の理由から始まって、およそ状況の原因や理由といったものはすべからく説明されず、状況においてキャラクターがどう行動するのかを見せることが全ての作品だった。だから、最後の最後で新たな関係性が疲労された所で「はあ」程度の驚きしかない。
ただ、ある場面とある場面の繋ぎは全くどうでもよくて、それぞれの場面とその蓄積によって物語に仕上げることは挑戦的で、10話は相対的に短いが追加で2、3話あってもなくても良いし、最後の次シリーズへの引きとも取れる意味深な台詞を反故にしても筋として通るように仕上がったことは凄く、アニメの懐の深さを再認識した。
『結界師』
新たな能力とその謎を含みつつも、一通りの決着を付けてまとめはした。
作品の一番の見せ所であろう主人公の持つ、誰かを守りたくてそのために強くなりたいという純粋な気持ちがあり、その気持ちは単純明快なもので当初から独白などで描かれていた。にもかかわらず、強くなりたい方向性がずれた敵と退治した時に、真正面からその気持ちをぶつけずに「よくわからねえけど」何て言わせてしまうことで、見てきたこちらは痛いほど分かっているのだから、急に頭の悪いことを言い出したなと思えた。それにより、積み重ねてきたものを台無しにしてしまったなという印象を受けた。
こういった仕上げの雑さが勿体無かったなと。
『スカイガールズ』
まあ、ワームの設定が古臭かった以外は取り立てた部分もなかった。ただ、お祖父さんの言葉は少ないながらも全てを察した上でのやりとりが良かった。こういう基本的だけど、大事にしなくてはいけない場面がどれもそれなりに仕上がっていたので、好みはあれど悪くない作品でした。
『Myself;Yourself』
よくもまあこれだけ鬱々しくて面倒臭い設定を詰め込んだものだというほどでお腹一杯。それにもかかわらず、本筋が尺足らずな感じしかしなくて、落とし方も無理矢理着陸した感じ。終ぞOPの文化祭のような気持ちの良い映像は見ることが出来ませんでした。残念。
『ナイトウィザード The ANIMATION』
最終的な話の展開が想定通りだけど、それに対するキャラクターの意思や反応が、どうにもずれているように思えた。世界がどうとかの展開も理由が手垢塗れなのにひねりがないし、あの程度で絶望とか、もう見てらんないといった感じ。下がる男ネタも面白く出来てないのに、繰り返し見せられてもくどかっただけで、何とも面白みのない想定の範囲内でした。
『げんしけん2』
全体的に丁寧で、BLパートや異国からの客人なども上手く描かれていて、特に就活は辛い感じが強く出ていた。それにしては、あまりにあっさりと運んだ結果が腑に落ちない気もする。要は、ほんまもんの不適格者だと思い込むほど打ちのめされたけど、ほんまもんでなかっただけでしょうか。まあ、フィクションとしてはこれくらい救いがあった方が、見ていて気持ち良いけどね。
『スケッチブック full color’s』
緩くて温かい日常が最後まで統一されていて、その中での幅を使って丁寧に作られていた。全編が日常の平坦な話なので、そこで起こるちょっとしたことやそれに対する反応全てが見せ所になるので、かなり丁寧かつ高度な演出を求められるだろう。それが、出来ていたと思う。
最後の主人公がちょっとだけ変化した様子が微笑ましく、次シリーズがあると良いなと思えた。
『プリズム・アーク』
学園ものとしても、ファンタジーやアクションとしても中途半端でパターンに頼りすぎな印象を受けた。特に、学園長が毎回言う、反語がくどくてつまらなかった。
また、王女かどうかということや、それがどちらであっても主人公がどうしたいのかや、王女であることの話の上での仕掛けと、どれをとっても良いとこ取りしようとしていて、全編を見せずにダイジェストだけ見せられたようで、物語として捉えると半端だったと思う。
『もやしもん』
物語としては途中で、作品の核である主人公が決意に至る過程が示されるまでの一区切りが描かれていた。
とにもかくにも、コミカルで愛らしい菌とそれが見えることやそのやりとりや話の面白さの印象が強い。それに対して、与えられた天賦の才に受動的な主人公の能動的な反応としての決意は、見ていて気持ちの良いもので、是非とも続きが見たいと思わせるものであった。
『BLUE DROP・天使達の戯曲』
話としては、非日常に対する日常の対比であり、日常部分がかなり丁寧に描かれていたので良かった。ツンデレ、百合などのパターンで見られがちだが、丁寧に作られていたので、お嬢様でイチャイチャしているのだと解釈した。
一体感としてライブ感の強い劇を取り扱っていたが、その話が作品そのものに対するメタになっていたことや、2人と視聴者だけがそれを知っていることが面白く、その配役もそれまでの話で見せてきたキャラクターの個性に合ったもので、そこに至るまで過程やそれ自体の重みを物語りに活かせていたと思う。
最後の場面が最初の場面に繋がるが、今後の良い方向への進展が感じられるものに仕上がっていて、それも良かった。
『ef−a tale of memories.』
話はゲーム的で面倒臭いことがてんこ盛りといった感じ。全体的に分かりやすい暗喩を表現した画面作りや台詞回しが特徴的である。その演出は、止めることで安く済ませながらも見せられるもの(現在では止めであっても美麗で手間の掛かるものだが)を目指して発展してきたリミテッドアニメの方向性であり、それを最大限に活かしたものといえるだろう。同じ世界の近所の三者三様の物語を一つの物語として纏めた形式も新しく、演出との相性も抜群だった。
また、説明のほとんどを説明台詞でなく暗喩や演出で出来ていたことは、映像作品が目指す方向として正しく素晴らしい。
ハッピーエンドに不満はないが、いささか引っ張り過ぎだったので、背中を押したい気持ちに駆られた。たぶん、それがこの作品の核なのだと思うけど、あれだけの悲劇的状況に置かれた2人が心中を選ぶというのも伝統的な筋書きらしいので、見てみたかった気もする。
テーマが恋愛でアニメやゲーム特有の演出も多いので見る人は選ぶものの、素晴らしい作品だった。
『D.C.II〜ダ・カーポII』
一応の区切りは付いたものの、ヒロインとの話は次シリーズへ持越しするものと思われる。
主人公は鈍感で誰にでも親切で優しい。それ自体はありがちだけど、それがヒロインにとっては特別な関係へ踏み込めない辛さに繋がる展開は良く出来ていると思った。だけど、最終回の肝心な部分での「気持ちが伝わった」なんて説明台詞のせいで、今回のシリーズを通してやってきたことが台無しになった気がした。
それでも、『涼宮ハルヒの憂鬱』あたりから注目されやすくなったライブシーンは、ぎこちない関係となった2人を再び結び付ける契機となるだろう予感を感じさせるもので良かった。
作画面も比較的安定していたので、作品の持ち味を生かす方向へ正しく機能していたと思う。真の結末は、次シリーズを待つことになるだろうが、期待して待ちたい。

2007年12月22日 シリーズ全体の感想
『ご愁傷さま二ノ宮くん』
二宮くん自体は常に万全の受け入れ態勢で臨んでいて、結局はヒロインの心持次第だったという話。
話の内容はあってなきがごとしで、ファンサービスに繋がるように構成されていたが、終始それに徹していたので、目指すべき方向にブレはなかったと思う。最大の問題も笑い飛ばしてしまう〆方がこの作品らしくて良かった。
『ひぐらしのなく頃に解』
当初はキャラクターのデザインと事件の突飛さが相まって、随分現実離れした印象を受けたものの、今回のシリーズになってからは前回のシリーズから延々と続いてきた作品世界を形作るルールと場合分けの反復が効いてきた。特に、最後とその前の場合が今までに見せてきたことの総復習ともいえる内容で非常に面白かった。
全員が幸福とまではいかないが、不幸ではない落とし所になっていて、救いがあって良かった。ただ、ラストの意味深なカットの数々が少々不安を掻き立てられて、これが次回のシリーズへの引きなのかなと思った。
中止せずに放送した放送局、素晴らしい作品を作り上げたスタッフにありがとう。
『電脳コイル』
人類の英知の結集としての電脳メガネが日用品としてあって、それを使う人はというとそれほど心理面での進歩は見られない。それが根底にあって、最終的な落とし所としたことは、地に足を付けようという気概が感じられたし出来ていたと思う。
対決の話、泣ける話、淡い話、ミステリアスな話等々があって、そのどれもが物語に必要なことを映像で見せようとしていて、発毛の話のように話が映像として面白い回も多かった。
話の全体像や伏線のほとんどはどこかで明示されているので繋がったが、難しいことを難しいままに、分かる部分や全体像で理解していかないと中々難解な内容だったかなと思う。ただ、話の内容が今一つつかめなくても映像の密度が高いから印象に残ると思うので、マニア向けと罵られようと後世に残したい作品ではある。
未登場の番号の会員がいたと思うので、外伝的なものに期待したい。お疲れ様でした。ありがとう、楽しめました。

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