『ef-a tale of melodies.』
相変わらず目を引く見立てや台詞による演出はあったが落ちは予定調和に尽きる。それは、決して悪い意味ではなくて『ef - a tale of memories』から地続きになった時間を使った演出であって、容易に出来るのもではない。
ありとあらゆる被虐の言葉や罵詈雑言が文字通り息つく暇もなく繰り返される演出はかなり来るものがあって映像は台詞あっての媒体なのだなと思った。また、俺はOPやEDがそれ単体で完結した一つの作品だと思っているが、この作品ではバージョンの違いが本編と巧みに連動しており、放送上の形態以上にOP~次回予告までを通して一つの話として仕上がっていた。それは、録画視聴において飛ばさずに見させる技になっていると思った。
色々な描写が色々な演出で丁寧に描かれるものの、そうやって作り上げられる物語は俺にとって他人事にしか思えなかった。それに尽きる。と、いつもと同じ感想になってしまったが、要するに俺は俺のこういう感覚を扱った作品を求めているだけに過ぎないのだろうなと。
『ケメコデラックス!』
非日常と非常識の塊のケメコライフはそれだけで日常がドタバタしてしまう力があった。そんなに笑えないけど、良い雰囲気のドタバタはそれだけで好きなので見れた。むしろ、M眼鏡とS姉ちゃんのドキドキN極S極に期待していた自分がいて、昔からこの手の脇キャラが好きだ。話を完結させるでも、事情を説明するでもない状況で、クール分割の切れ目であえて一区切り付けないという実験的な終わらせ方とも思える。単に、次やるからと投げただけにも見えて、それが既に術中になっているのは抜け目ない。最終回に向けてケメコからエムエムが頻繁に降りるようになったり、パワードスーツらしく中に乗る者が透けて見えるカットがいくつか用意されたりで、一個の人格であるかのように思えたものが解体されていった。何にしても、一人でこっそり見たくなるセクスィーでエロい雰囲気があってこそだろう。
『テレパシー少女蘭』
そんなに頑張らなくても関わったことそのものが事件を解決に導く展開からか、作品全体に漂う胡散臭さとか説教臭さというかがあった。安っぽいのに、いつのまにか世界とか人間規模の話にまで拡大した事件も、あっさり解決していつものちょっとだけ不思議な力のある日常に戻る。あっさり解決の部分だけでなく作品全体が、常に人の信頼や絆を称えていて、この作品のそういうところが好きだった。
『あかね色に染まる坂』
パーツを使った組立作業というのが相応しい作品だった。今やステレオタイプとなったツンデレを骨の髄までしゃぶり尽くすことから始まり、ありとあらゆる属性の獲物が狙えそうな範囲でうろちょろしていて、深そうな雰囲気の友人キャラや複雑な設定のありそうな両親、連想ゲームで学園生活から連想される一通りをこなしたかと思えば、一回くっついたヒロインを保留しての妹離れ失敗宣言と来る。
以上の展開に全体的に作画が好調とは呼べないことが加わって、安っぽい雰囲気がするものの、愛すべき駄目さとでもいうべきか、毎回なあなあの内に見続けてこれたし、最後に怒涛の展開もあって良かった。決して後世に残るようなものではないけど、ふとした表紙に思い出して仲間内で話のネタにする位には良い作品でした。
『フルメタル・パニック? ふもっふ』
基本的に一話完結の完全な番外編だったのだけど、学園編らしい実に色々な種類の話があった。一般ずれした宗介の設定を十二分に活かし、ずれまくったやり取りの数々と見せ場のあるアクションの数々やパロディーや細かな日常動作の数々が相乗効果となって楽しい話が沢山見られた。何より、ちょっと見れば直に分かる宗介の一般ずれ具合のパターンがそこかしこにあったことが気軽で良かったと思う。
『RD潜脳調査室』
シリーズを通してテクノロジーの進歩に対する人間やその心のあり様、自然の雄大さが描かれていた。それは科学や文明といった人工が必ずしも自然の対義ではないということだと思えた。また、SFの設定やビジュアルも凝っていたが、あくまでそれを描くための手段として使われており、作品にテーマを持たせることが出来たと思う。テーマといっても説教臭くない賛美に収まっていたことも素晴らしい。
『狂乱家族日記』
少々酷だが、「家族って良いな」という手垢のついたテーマで極々初期段階から結論が出ているのに、紆余曲折を織り交ぜて引っ張るのは辛かったように思う。そもそも、この作品世界でのリアリティーの基準がほとんどの蛮行をギャグで済ますには厳しくしていた割には、主要なキャラの妙に芝居がかった照れ隠しと傍迷惑な軽薄さで、真面目にテーマをやるにしても、ドタバタするにしても辛かった。媒体の違いってことなのでしょうか。ちょっと残念でした。
『二十面相の娘』
全体を言えば、一人の少女の何年間かの出来事ってことになるし、綺麗に出来ていると思う。実際、二十面相の後継者として魔性を見せる場面では、演者の演技力がそれに見合っていたし、成長が演じ分け出来ていた。一方で、話の核となる二十面相一味の活躍と戦後から謎の技術や戦争を総括することは、特に後者は薄い内容だった。あくまで娘がメインなのでから、その辺の怨念染みた情念をドロドロ描いても困るが、あっさりと当事者意識を押しのけて否定することでもないだろう。
また、他の作品で見られるように史実や史実の人物同様に知っているキャラクターが登場することは作品をかなり押し上げた。二十面相しかり、明智探偵しかり、サプライズしかり。その点が確認出来ただけでも大きいし、そこそこ楽しめた。
『夏目友人帳』
良く出来た作品なのだが、全体的に淡い感じがあって、悲観に過ぎる程ではないにしろ物悲しげで、それだけに特異な関係である妖怪との関係や妖怪同士の関係がグッと来る。特に、ニャンコ先生との関係はやがて来るであろう離別を容易に想像させる。しかしながら、悲しくなる為に嬉しさを溜めるというものではなく、一期一会を大事にする姿勢があり、それがこの作品の良い所だ。2期も控えているようで楽しみです。
『NeoAngelique Abyss Second Age』
自ら剣を取り闘う展開もあって、全体的にアクションが面白かった。また、内容も味方と闘うことになったり、女王としての定めに従い遠い場所へいってしまうアンジェリークに対し、皆が付いて行くといった無粋なこともなく、それぞれがそれぞれに会う方法を探して生きている姿が描かれるエピローグが、終始オーブハンター達との関係をつがいとなるためのありふれた愛とは違ったものとして描いてきたことの集大成になっていたと思う。形としては悲恋にあたるが、そういう次元とは違った思いというものがあるのなら、むしろそちらを描いた作品だろう。運命に付き従う姿は御都合的だが、結構好きだった。
『モノクローム・ファクター』
一見真面目そうで、かと思えば妄想と誇張の入り混じった前回の回想があったり、崩した画でのコミカルな場面があったりで、敵の企みの意図が今一つ見えないものの伏線にはなっていたり、でも何だかんだで溜めに溜めた割には意味の薄いものだったりした。そういう想定の範囲内で繰り広げられる気楽で安っぽい感じがこの作品の本質であり、それを重々承知したように見える内容になっていた。そんなに好きでもないけど嫌いでもない。そんな作品でした。
『WORLD DESTRUCTION 世界撲滅の六人』
世界の正義に背いた行動が広い意味での世界や局所的な意味での世界に対しての正義足り得るという構造に爽快感があり、その点は義賊ものだろう。また、世界を見て回った後に過去を振り返り、改めて世界と自分とを問い直すこともあり、その点は成長物語だろう。
人は生まれてから年を取るにつれて見える世界が広がっていくものだが、モルテにとっては家族と過ごした家庭という世界の局所が世界であり、壊れてしまった以上は自分の世界の存在しない世界を撲滅してもよろしいという独善に陥った。そこから旅を通して薄々感じていた善の心と呼応し、トッピーの口癖を生かした二項対立的サブタイトルが多様性という終着点へ行き着く流れの妙となり、1クールで物語を作って見せた。
極めて思春期的な妄想を具現化したような作品だが、それに対し真っ直ぐな作りになっていたと思うし、好きだった。
『イタズラなKiss』
見終わって思うのは恋愛をフィルタとした話だなと。あらゆる場面でのあらゆる行動に恋愛対象が関係するか意識されており、友人達の模様を挟んでもそれは変わらない。そういう部分を選んで切り貼りしたからそうなったとも考えられるが、本来ならば(まあ、ヤンキーチックなやつなので必ずしもその限りであるとは言えないが)恋愛対象足り得ない金之助に市民権が与えられていた部分が、俺のような盆暗野郎を惹き付けたこの作品の妙だろう。
自分に過剰な幸福を願ってはいないが、何だかんだでフィクションとはいえ他人の幸福を見るのは悪い気がしない。何より、未完の作品が完結したことは喜ばしいことだ。
『乃木坂春香の秘密』
作品そのものの内容ではないが、DVDのCMで言う所のニヤニヤしながら見ているお兄さんとしては楽しめる内容だったと思う。ただ、各場面での二人の恋人としての嬉恥ずかしなやり取りと祝福されながらも茶化される具合に対し、話の展開として互いの特に春香が気持ちに気付いていないという展開と引け目を感じる主人公の優柔不断さというか屁垂れさが大きく乖離していたし、美少女ものと子供向けとそれに絡んだコスプレや周辺商品という極めて狭い範囲のオタクだけが描かれているのに、それに対する差別意識の描かれ方がステレオタイプ過ぎた。それらの点がこの作品の粗さであり、弱点足り得ると思った。
それでも、才色兼備で文武両道でご令嬢で隠れオタクのつもり、おまけにウィスパーボイスという最高の材料で作るミックスジュースのような作品のお味は、多少の粗さも許せるくらいに大変美味しゅう御座いました。
『薬師寺涼子の怪奇事件簿』
薬師寺涼子は神と悪魔の祝福を受けたかのような特別な存在として扱われていて、確かにそういう節を許容出来るだけのものはあったのだけど、性的な意味での女以外に身近に感じる要素がなかったので捉え切れなかった印象だけが残った。
例えるなら、エンジンは掛かっていたのだけど、フルスピードで最初から最後まで付いていけるスピードに落ちてこなかった感じ。ただ、いつか追い付けるかもという期待感で見られるだけの力はあった。追い付かないけどね。
『ブラスレイター』
この世の不条理とそれに対抗できる力の行使と対立、その中での人と人との絆がテーマであり、アマンダの機体に描かれた「絆」の文字がそれを雄弁に語っていた。
3DCGで描かれたスピード感のある戦闘は密度が高く、2Dと比べた画面の浮きが少ないが、やや忙し過ぎで全体の中では浮いた印象を受けた。設定上仕方ないとはいえ、大半の戦闘が戦略や戦術的な考えや感情のぶつけ合いの少ないもので、いざという時には戦闘と会話が分離して描かれ連続性を失っていたことが原因だろうか。
同じ闘いながらの会話でも、動画としての闘いと会話が分離しているよりは、混ざっている方が主従の逆転も可能であり気持ちを惹き付け続けることは、既に過去の作品が実証済みだ。
それでも、戦闘以外の部分では十分に魅力ある作品だったと思う。
『ぷるるんっ!しずくちゃん あはっ☆』
純真無垢なしずくちゃんを大好きなみんながいて、その中でもつむりんの立ち居地が重要で、ノリでボケ倒すしずくちゃん一行の中であって、自分自身もそこに加わりつつもツッコミ、ツッコミつつもそこに加わる絶妙な立ち居地だ。基本的にはそれが話のパターンの中心にあり、その役目はしばしば別のキャラクターが担うこともある。それはパターンの王道として確かなものであり、あらゆるシチュエーションがあり、現実にはありえないのだが永遠に続いていくような安心感と期待感があった。それを成立させていた目に見えないものが、最終回で提示されていたと思う。それは、最終回Bパートの話の内容そのものである。
その内容は、虚構の中の虚構である芝居が行われ、その芝居を映画として収め終えた勢いのまま終わるものだ。それに、しずくちゃん以外は結婚という極めて現実的なことに対し現実的な感情で挑んでいたが、しずくちゃんだけは最後まで純真無垢であり「僕はみんなが好き」を体現していた。要するに、しずくちゃんという純真無垢な存在を皆が愛していたことが、この作品の最もこの作品らしい部分だったといえるだろう。
加えて、突飛なシチュエーションの話はもちろんのこと、この作品の話全てが虚構である作品内の虚構である芝居だったのではないかという可能性を公式に提示したようにも思える。つまり、この話がメタ的な視点で描かれていて、それが番組が終わることの絶望に対し、作品と作品世界が永遠であることの希望の提示という強烈なアンチテーゼに思えた。
その時、一つの王道が終焉を迎えたのだろうか。否。王道は死なず、何度でも蘇る。僕はこの作品が大好きでシリーズが大好きでした。
『To LOVEる-とらぶる-』
全体としてはあけっぴろげなララや外野に翻弄されつつ、二項対立に悩むリトとサービスカットが見所といえば見所だった。しかし、その過程で誰が定めたわけでもない非日常がいつまでも続く当然の日常として過ごすに至るも、ひとまずの答えを求められる。そこで、リトが答えを出そうと奮戦するものの、明確な答えを出すのはララであり、リトは明確な答えを出せないまま終わる。それは、連載中の作品ゆえに落とし所は無難だったと思うけど、制作者という絶対的な存在に踊らされていただけのような印象を受け複雑な気持ちになった。
それでも、緩く見られてモヤモヤ出来て、どちらかというと良い作品でした。
『ひだまりスケッチ×365』
前シリーズもそうだが、時系列の混ぜこぜは、繋がりのもっともらしさとシチュエーションによって楽しみを増すものだと思う。
内容は至って保守的なほのぼのとした日常でありながら、第1話の学校までの疾走、パースよりは陰影や空間把握による補正を狙った画面作り、突然の俯瞰といった斬新な作りも健在で、与えられた範囲内でいかに挑戦するのかといった感じの見応えがあった。
僕は迷いネコの話が好きでした。
『精霊の守り人』
画面の密度と話の内容の密度が合わさった映像の密度の高さ。それがこの作品を面白く見れた理由だろう。内容自体は薄い回も多かったが、その中でのキャラクターの細やかな心の動きや思惑の錯綜が、レイアウト、動きと声の演技、音楽で的確にかつ想像力を喚起しつつ展開されたことで、逆に濃密な印象を受けた。
それだけに楽しい作品だが、気の抜けない作品でもあり、本気の視聴を要求される作品だったと思う。

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