『神曲奏界ポリフォニカ』
神曲楽士の遺した自動演奏装置の演奏に歌を乗せ神曲にしようとする精霊。しかし、神曲を録音したものは神曲の紛い物であり神曲ではない。さらに、そのことが精霊自体の命を削ることにもなる。当然のように、正論による説得は意味をなさない。
そんな時、精霊との共存に反対する勢力による精霊の暴走を利用したテロが起こる。街からは明かりが失われ、その様は精霊と人間の断絶にも見える。暴走を抑えるために紛い物の神曲を奏でる精霊。街に響き渡るその曲に、ある者は曲を、ある者は歌を、ある者は手拍子を、各話に登場したゲストキャラも再登場し、それぞれが思い思いに乗せていく。そうして膨らんでいった曲は紛い物ではなく本物の神曲となって自体は収拾し、精霊達の光で街に明かりが灯る。それは、精霊と人間の絆であり、主人公自身にとっても、違う存在ではあるが共存の可能性を感じさせるものだ。そこへ駆け寄る仲間と手を取り合う二人。
そう、これです。作られた意識でない個々の意識が集合していって大きな流れになる。それを精霊の美しい歌声に乗せて1曲全部の演奏により見せる。普遍的幻想を具体化する高度な演出。底力を見たような気がします。
ちょっとした話の見せ方の悪印象や、ヤシガニ作品に数え上げられる全体的に低調な作画によって、最後まで通して見た人は少ないのではないかと思う。そうやってヤシガニ作品の括り以外の部分は忘れ去られていくだろうが、このラストの流れは後世に伝えていきたいと思わせるものがあった。良いものが見れました。ありがとう。

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okm

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