『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』
カップリングが強固でありながら、ヒロインを魅力的に見せ、あわよくばの妄想を広げつつも、まあないなという主人公の誠実な性格が表現されており、すけこましに見えないように配慮された細かい間の作り方が上手かったと思う。一応の決着は付いたが、背後に走る話は消化不良で続きは劇場の露骨な尻切れ感が勿体無いなと思った。

『グラゼニ シーズン2』
全体的に下品すれすれの銭金の話だが、同じ世界での成功者の中にも銭で見れば明らかに多寡という比較での序列があり、プロとして勝ち続けることと走り続けることの大変さを一歩ずつ踏みしめて行く。それと同調するかのような座組で、軽快な劇伴や独白口調でのナレーションで見せて行く作風。そういったことに年を重ねることでより感慨深くなる感情に訴える作品だったと思う。かなりゆっくりと原作を消化していくので、絶対に終わりに追いつくことはないが、あえて途上で終わることで、まだまだこれからという内容と印象が上手く同調し、とても心地よい終わり方になっていた。続きがあっても良いし、なくても良い。そういう絶妙な塩梅。声優としてこれからの落合さんとこの息子さんの状況ともとても重なっていて、きっと転機の作品になったんじゃないかな。

『うちのメイドがウザすぎる!』
日常の世界に非日常が押し寄せて、いつしか日常になり、掛け替えのない思い出になる。そういう無限クールなキッズ枠の系譜に女の子の皮を張った作品でありながら、大人という存在との関係性を逃げずに描く。この作品の掛け替えのない日常は家族の団欒として描かれていた。OPとEDの如何にもコミカルな曲やドタバタな展開での照れ隠しにも似た見やすさもあって、結構良かったと思う。

『となりの吸血鬼さん』
一見して非日常ながらも、いつしか変わらない日常。あるいは変わって欲しくない日常。その愛おしさを見終わった時に感じられる作品というのは幸せである。極めて優れた物語がある訳ではないが、本質的には『ドラえもん』に代表されるような1話完結の同居もの作品の系譜として、設定を日常に落とし込んで得られる解の幅と積み上がって行く情の厚みで見せる作品。1クールなら女の子の方が可愛らしく作りやすいし良いと思う。

『SSSS.GRIDMAN』
原作の早過ぎた名作扱いを本物にするという意気込みと、設定やらの拾い方は上手かったと思うけど、量産型の熱血と作画アニメの型枠に押し込んで成型したせいで、主題歌と展開から容易に想像出来た驚きの薄い落ちが途端に作為過ぎて鼻に付いてしまった。原作はきっと良い作品なのだろう。作り手もそれを好きなのだろう。だけど、お手盛りの手法で走りきろうとしたのは、お仕事であってセンスや熟考が産み出す情熱ではないよね。本当にみんなが好きで好きだったのは、本物の風格がまとった情熱からほとばしる熱気だったはずだよ。OPにはあったのに何でだろう。難しいね。

『ゴブリンスレイヤー』
西洋ファンタジーの世界なので騎士風の鎧兜や剣だが、ゴブリンスレイヤーは紛うことなき武士道の持ち主であり、その血潮がエログロバイオレンスの娯楽の王道の底に流れているからこそ、薄めの爽快感がいい塩梅になっていたと思う。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの体現として、私的なゴブリンへの復讐が公的な安全や小さな平和へと繋がる。男ならそういう生き方に憧れずには居られまいて。

『BAKUMATSU ~恋愛幕末カレシ 外伝~』
スマホゲーっぽい、安く巻き上げようというマーケティング論満載の設定に対して、逆襲を試みるかのような実直な作りで、一つ一つはありがちで新規性に欠けるけど、歴史上の人物同士の関係性や逸話を受けてしっかりまとめてあって好感が持てた。つづくのままだが最終回みたいなので、2期も1期という歴史をしっかり受けて作った歴史を踏襲してくれたらとても嬉しい。1期に関しては今後10年は語り草にする位気に入ってたからね。

『ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』
硬軟織り交ぜの調和が歪で、特に軟の如何にもな安っぽいラブコメ感が、命懸けの闘いの最中での全力で命を燃やす若人達の物語と致命的に齟齬になっていた。安い設定を使って逆説的に物語として真に迫る何かを表現しようとする。アニメの歴史において、しばしば作り手の情熱で突破してきた作品や惜しくも敗れ去った作品が持っている気迫のようなものが希薄に感じられた。その上で茶番から俺達の闘いはこれからだをされても白ける所か、最後まで着いて来てくれた視聴者への裏切りにしか見えんかったで。たぶん、この作品のテーマはジャンヌとジルを中心とした信頼やぞ。作り手が受け手の信頼を裏切るなよ。

『ガイコツ書店員 本田さん』
本来不気味なはずのガイコツが本田さんの皮を被ることによって、皮がないのに愛着が湧いてくるのだから、不思議なものだね。

『蒼天の拳REGENESIS 第2期』
北斗っぽい何かを積み上げたら蒼天に届くかと思ったけど、如何にもな昔の作風の方が真に迫る力を持っていたってのが皮肉よな。2期目の時間経過と大胆な作風の転換を狙ったのかもしれないけど、茶番になっただけで寂しいね。

『メルクストーリア -無気力少年と瓶の中の少女-』
雰囲気が優しくてとても好きだった。特に「夢添いの君と忘却の町」の全部説明せずに会話から設定が読み取れて心に込み上げてくる台詞回しと演技。そういうのはアニメの苦手な所なんだけど、タイトルにあるような無気力感は全く無くて、作り手が真正面から全力がぶつかってくる作風でとても楽しめた。全体的に淡い雰囲気ながらも、底に流れる熱き血潮。恐らくベテランが若手の熱さに触発されたのではないかな。

『かくりよの宿飯』
結局、あの日のあれは誰だったのかで、ちょっとそれっぽいイケメンが出てきてみたいな典型に、細腕繁盛記的な盛り立てと、異世界救世と異文化交流を足して、盛り合わせにした料理って感じで、なるほどテーマにあった内容だなと思わせるものはあった。カップリングが強固なので、好みの差が出やすいとは思うが、別に嫁感を求めていないから十分楽しめた。

『中間管理録トネガワ』
ちょこちょこカビラも悪くない所はあったけど、全体的にくどくて、明らかに黒服の独白ナレで進む回の方が上でした。その辺が無ければもっと楽しめたと思う。まあ、それでも十分楽しめた方ではある。

『バキ』
高密度なんだけど、省エネな感じもして、座組も実直で、古きよきって感じの風格が心地よくはあるんだけど、区切りが話の一段落としてそこで終わりかって感じで、続きが前提なのが辛くはある。

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